気に入った居抜き物件が見つかると、早く申し込みたくなりますよね。ただ、居抜き物件は契約前にチェックリストで確かめておかないと、契約のあとで困ることがあります。設備が動かない、リース品で引き継げない、許可の基準に合わない、といったケースです。この記事では、居抜き物件の契約前に確かめたいことを、設備・造作譲渡料とリース品・営業許可と消防・ビルの規定の4つに分けてまとめました。
この記事の結論
- 居抜き物件の契約前には、設備の「使える・使えない」、造作譲渡料とリース品、営業許可と消防、ビルの規定と工事区分の4つを確かめます。
- 設備は年式・動作・衛生状態・リース品かどうかで分け、家賃や造作譲渡料だけでなく、改装費と入れ替えの費用を合わせて判断します。
- 営業許可は居抜きでも取り直しです。内見で確かめられない項目は、契約前に書面で扱いを決めておくと、引き渡し後の行き違いを防げます。
居抜き物件の契約前チェックリストは4つの分野で考えます
居抜き物件の契約前には、設備・造作譲渡料とリース品・営業許可と消防・ビルの規定の4つを確かめます。どれも、契約してから条件を変えるのが難しい項目です。
居抜き物件とは、前のお店の内装や厨房などの設備が残ったまま貸し出される物件のことです。造作譲渡料とは、居抜き物件で、前のお店が残した内装や設備を引き継ぐときに支払う費用のことです。残っている設備を活かせれば、何もない状態からつくるより費用と工期を抑えられます。
| 分野 | 主な確認項目 | 確かめる相手 |
|---|---|---|
| 設備 | 厨房機器、給排水、排気、空調、電気とガスの容量、内装の傷み | 内見、不動産会社、前のテナント |
| 造作譲渡料・リース品 | 譲り受ける物の一覧、金額、リース品の有無と条件 | 前のテナント、不動産会社、リース会社 |
| 営業許可・消防 | 今の基準に合うか、業態が変わる場合の手続き | 保健所、消防署、福岡市の窓口 |
| ビルの規定・契約 | 工事区分、工事の時間帯、看板の決まり、退去時の条件 | 貸主、管理会社 |
居抜き物件は、家賃と造作譲渡料だけでなく、改装費と設備の入れ替えの費用を合わせた金額で比べるのが基本です。
居抜き物件の設備の「使える・使えない」チェックリスト
設備は、そのまま使える・直せば使える・入れ替えが必要の3つに分けて確かめます。外から見ただけでは、動作や年式の問題が分からないことがあるためです。
グリストラップとは、厨房の排水から油や食べ物のくずを分けて、下水に流れないようにする装置のことです。動力とは、業務用のエアコンや厨房機器などに使う三相200Vの電気のことで、物件によっては引き込まれていないことがあります。
| 設備 | 確かめること | 入れ替えを考えるサイン |
|---|---|---|
| 厨房機器 | 動作、製造年(本体の銘板)、におい・汚れ、リース品かどうか | 動かない、年式が古い、部品が手に入らない |
| 給排水・グリストラップ | 水漏れ・詰まり、排水の流れ、グリストラップの位置と清掃の状態 | 床下に漏れの跡がある、においが強い、新しい厨房の配置に合わない |
| 排気・空調 | 排気ダクトとフードの油汚れ、換気扇の動作、エアコンの年式と効き | ダクトの中まで油が固まっている、エアコンが効かない |
| 電気・ガスの容量 | 契約している容量、分電盤の空き、動力の有無 | 使いたい機器を同時に動かすと足りない |
| 内装・下地 | 床のはがれ・浮き、壁の汚れ、天井のしみ | 天井のしみ(雨漏りや配管の漏れのおそれ)、床の沈み |
電気・ガス・水道が止まっていて動作を確かめられないときは、いつ確かめられるかと、動かなかったときの扱いを決めておきます。見た目がきれいでも、動作と年式を確かめるまでは「使える」と決めないことが大切です。
ポイント
内見では、製造年の書かれた銘板、排気ダクトの出口、分電盤、トイレと手洗い、入口と看板を写真に残しましょう。あとで費用の幅を出すときの材料になります。
造作譲渡料とリース品のチェックリスト
造作譲渡料は、何を引き継ぐのかが一覧になってはじめて、金額が見合うかを判断できます。リース品は譲渡の対象にならないことがあるため、別に確かめます。
- 譲渡の対象:引き継ぐ機器・家具・内装・看板の一覧と、その中に含まれない物
- 持ち主:前のテナントの物か、貸主の物か(貸主の設備は譲渡の対象にならないことがあります)
- リース品:リース会社の持ち物です。使い続けるには契約の手続きが必要で、残りの期間と月々の支払いも確かめます
- 引き渡しの状態:今の状態のまま引き渡す条件だと、引き渡し後の故障は引き継いだ側の負担になることが多いです
- 貸主の承諾:居抜きでの入居と造作の譲渡を、貸主が認めているか
譲渡の対象と引き渡しの条件を書面に残さないまま造作譲渡料を支払うと、「含まれていると思っていた機器がない」といった行き違いの原因になります。
金額の話し合いは、不動産会社を通して進めることが多いです。確かめた内容を一覧にまとめておくと、条件を伝えやすくなります。
そのまま使える・後回しにできる部分の見分け方
同じ業態で、動作と衛生状態に問題がない設備は、そのまま使えることが多くあります。全部を新しくせず、残す部分を先に決めることが、居抜きのよさを活かすコツです。
- そのまま使いやすいもの:カウンターの本体、漏れのない給排水の配管、年式が新しく効きのよい空調、トイレ、看板の本体
- 手を入れれば使えるもの:カウンターの天板や扉(表面をシートで仕上げ直す)、壁(塗装で色を変える)、看板(面板の入れ替えは1面3万円〜が目安)
- 開業後に足せるもの:壁の装飾、照明の演出、家具、置き看板
改装の費用は、壁・床・照明・看板の変更が中心の軽い改装で1坪あたり5万〜15万円(税込の目安)です。客席やカウンターを作り替える標準的な改装なら、1坪あたり15万〜30万円が目安です。
厨房や水まわりを動かす大きな改装は1坪あたり25万〜45万円で、スケルトンからつくる費用に近くなることがあります。スケルトン物件とは、床・壁・天井の仕上げや設備がない、コンクリートむき出しの状態の物件のことです。
蕎麦店から居酒屋への居抜き改装(家物語グループ札幌オフィスの施工例)でも、カウンターや扉は壊さず、傷を補修してからシートで仕上げ直しました。残す部分を先に決めてから改装の範囲を考えると、開業資金を運転資金にも残しやすくなります。
募集図面と内見の写真をLINEで送っていただければ、残せそうな設備と入れ替えが必要な設備を一緒に整理できます。
営業許可・消防のチェックリスト(2026年9月時点)
居抜きでも、営業許可は新しく取り直します。前のお店が許可を取ったときと今とで基準が同じとは限らないため、残す設備が今の基準に合うかを確かめます。
防火対象物使用開始届とは、お店などの建物の使用を始める前に、所轄の消防署に出す届出のことです。用途変更とは、建物の使い方(例:事務所から飲食店)を変えることで、規模によっては建築確認の手続きが必要になります。
| 手続き | 確かめること | 主な相談先 |
|---|---|---|
| 飲食店営業許可 | 手洗い設備・シンク・床や壁の材質などの施設基準。工事後に保健所の確認を受けてから営業します | 保健所 |
| 美容所の開設の届出 | 作業室の広さ・照明・換気・床の材質などの基準。構造設備の確認を受けます | 保健所 |
| 防火対象物使用開始届 | 使用を始める前の届出。広さや用途によって、消火器・誘導灯・自動火災報知設備などが必要です | 所轄の消防署 |
| 用途変更 | 業態が変わり、床面積が200㎡を超える部分の用途を変える場合は、建築確認が必要になることがあります | 福岡市の窓口、建築士 |
表は2026年9月時点の一般的な整理です。制度や基準は変わることがあるため、所管の窓口で最新の情報を確かめてください。残す設備が今の基準に合うかは、図面の段階で事前相談しておくと、工事の手戻りを防げます。届出・申請はオーナー様(または建築士・行政書士)が行うもので、福岡店舗内装工事.comでは事前相談に使う図面の用意をお手伝いします。
ご注意ください
業態が変わる居抜き(例:カフェから焼肉店)では、排気・給排水・電気の条件が大きく変わり、残せる設備が少なくなります。業態を変えるときは、許可の基準とあわせて、設備の入れ替えの範囲を契約前に確かめましょう。
ビルの規定と工事区分のチェックリスト
ビルの規定は、工事の費用と日程に直接かかわります。工事の区分と決まりを書いた資料を、契約前に取り寄せて確かめます。
A工事はビルのオーナーが費用を負担して行う工事、B工事はテナントが費用を負担してビルの指定業者が行う工事、C工事はテナントが費用を負担して自分で選んだ業者に頼む工事のことです。工事区分表とは、ビルの工事のうち、どの部分をだれが行い、だれが費用を負担するかを決めた表のことです。
- B工事の範囲:空調・防災設備・分電盤など、ビルの指定業者の工事になる部分と、金額の出し方
- 工事の時間帯:夜間・休日しか工事ができないか、音の出る作業の時間の決まり
- 搬入:資材の搬入経路、エレベーターの使い方、工事車両を止める場所
- 看板:取り付けられる位置・大きさ・照明の決まり
- 排気とにおい:ダクトの出口の位置や、においへの配慮の決まり
- 退去時の条件:引き継いだ造作を、退去するときに撤去する必要があるか
原状回復とは、テナントが退去するときに、借りたときの状態(契約で決めた状態)に戻すことです。居抜きで入居しても、退去時はスケルトンに戻す契約になっていることがあるため、原状回復の範囲も契約前に確かめます。
契約前チェックの進め方:内見から契約まで
契約前のチェックは、内見の前後で段取りを決めて進めると、短い期間でも抜けが少なくなります。
- 資料を集める:不動産会社から募集図面、設備の一覧、工事区分表を受け取る
- 内見で確かめる:動作・年式・汚れ・水漏れを見て、銘板や配管まわりを写真に残す
- 譲渡とリースの一覧をもらう:譲渡の対象、金額、リース品の有無と残りの期間
- 費用の幅をつかむ:残す・直す・入れ替えるに分けて、改装費の概算を出す(概算見積もりは無料です)
- 窓口に事前相談する:基準に合うか迷う設備がある、業態が変わるといった場合
- 条件を書面にしてから契約する:譲渡の対象、引き渡しの状態、動かなかったときの扱い、工事区分
契約の前に「残す・直す・入れ替える」の費用の幅をつかんでおくと、造作譲渡料が見合うかを判断しやすくなります。ご相談から開業までの全体の段取りは、開業までの流れをご覧ください。
契約前の相談で送っていただくもの
相談のときは、図面と写真がそろっていると、確かめるべき点と費用の幅をお伝えしやすくなります。
- 募集図面(間取り・設備の位置が分かるもの)
- 内見の写真(厨房、排気ダクトの出口、分電盤、トイレと手洗い、入口と看板)
- 造作譲渡の一覧、リース品の情報
- 業態・メニュー・席数のイメージ
- 開業の希望日と、内装にかけたい予算
福岡店舗内装工事.comでは、募集図面と写真から、確かめたいポイントと費用の幅をお伝えします。ご予算感に相違がなければ現地でも確かめ、その業種に向かない物件であればそうお伝えします。契約前の確認の考え方は選ばれる理由に、居抜きの改装の進め方は居抜き物件の改装工事にまとめています。飲食店の費用の目安は、飲食店の内装工事の費用と坪単価の相場で解説しています。
居抜き物件の契約前チェックでよくあるご質問
- 内見のときに、厨房機器の電源を入れて確かめてもいいですか?
- 貸主や不動産会社の了承が得られれば、確かめることをおすすめします。電気・ガス・水道が止まっていて動かせない場合は、いつ確かめられるかと、動かなかったときの扱いを契約前に書面で決めておくと、引き渡し後の行き違いを防げます。
- 同じ業種の居抜きなら、前のお店の営業許可を引き継げますか?
- 引き継げません。飲食店の営業許可は、新しくお店を始める人が取り直します。今の施設基準に合わない設備があれば改装が必要になるため、図面の段階で保健所に事前相談することをおすすめします。
- リース品が残っている場合はどうなりますか?
- リース品は前のお店ではなく、リース会社の持ち物です。使い続けるにはリース会社との契約の手続きが必要で、引き継がない場合は引き上げられます。どの機器がリース品かを、契約前に一覧で確かめてください。
- 造作譲渡料の金額は、話し合いで変わることがありますか?
- 変わることがあります。造作譲渡料は前のテナントとの話し合いで決まるもので、不動産会社を通して調整することが多いです。設備の状態と、入れ替えが必要なものの費用を一覧にしておくと、金額が見合うかを判断する材料になります。
- 物件がまだ候補の段階でも、相談できますか?
- はい、候補が複数ある段階でもご相談いただけます。募集図面と写真があれば、確かめたいポイントと費用の幅をお伝えします。物件探しそのものは、不動産会社にお願いすることになります。
まとめ
- 居抜き物件の契約前には、設備・造作譲渡料とリース品・営業許可と消防・ビルの規定の4つを確かめる
- 設備は「そのまま使える・直せば使える・入れ替えが必要」に分け、改装費と入れ替えの費用を合わせて判断する
- 営業許可は居抜きでも取り直し。今の基準に合わない設備は、改装が必要になることがある
- 退去時の原状回復の範囲やB工事など、契約で決まることは契約前に書面で確かめる
候補の物件がまだ決まっていない段階でも、募集図面を見ながら一緒に確かめられます。





