飲食店の開業準備を進めていると、保健所への事前相談はいつ、どんな図面を持っていけばよいのか迷いますよね。飲食店の営業には保健所の営業許可が必要で、お店の設備が基準に合っているかを、工事のあとに保健所が確認します。この記事では、事前相談の時期と窓口、図面に書き込む設備、内装で気をつけたい施設基準のポイントを整理します。内容は2026年9月時点の福岡市の案内にもとづいています。

この記事の結論

  • 飲食店の保健所への事前相談は、工事に着手する前に、設計済みの図面を持って行います。福岡市では、お店がある区の衛生課食品係が窓口です(2026年9月時点)。
  • 図面には、手洗い設備と水栓の形、シンクの数、床・壁・天井の材質、厨房と客席などの区画、更衣場所や保管場所を書き込みます。
  • 装飾や家具は開業後に足せます。手洗い・シンク・区画・床と壁の材質は、完成後に直すと手間と費用がかかるため、着工前に確かめます。

飲食店の保健所への事前相談は、着工前に設計済みの図面で行います

飲食店の保健所への事前相談は、工事に着手する前に、設計済みの図面を持って行います。基準に合わないと、完成後に手直しが必要になるためです(福岡市の手引き)。

保健所への事前相談とは、工事の前に図面を見せて、お店の設備が営業許可の基準に合うかを確かめてもらうことです。施設基準とは、営業許可を受けるために、お店の構造や設備が満たす必要のある基準のことです。

福岡市では、相談と申請の窓口は、福岡市保健所の各区の衛生課食品係です(例:中央区なら中央衛生課食品係)。物件が決まる前なら、予定地がある区か、自宅がある区の窓口でも相談できます。

段階時期の目安主な内容
事前相談工事に着手する前設計済みの図面で、施設基準に合うかを相談する
営業許可の申請営業開始予定日の少なくとも1週間前まで申請書と施設の図面などを出し、検査の日を決める
施設の確認検査工事が終わったあと営業者か食品衛生責任者が立ち会い、基準に合うかを確かめる
営業許可証の交付基準に合うことの確認後書類の作成のため、交付まで数日かかる

表は、2026年9月時点の福岡市の手引きをもとにした流れです。申請はオンラインでもできますが、手数料は窓口で支払う案内です。事前相談は「図面が決まり、工事を始める前」に行うのが基本です。

事前相談に持っていく図面に書き込む設備

事前相談の図面は、お店の平面図に、設備の位置と仕上げの材質を書き込んだものです。福岡市の施設基準の資料にある図面の例をもとに整理すると、次のとおりです。

図面に書き込むもの書き方のポイント
厨房の設備シンク・冷蔵庫・コンロ・作業台の位置。シンクは数と大きさも
手洗い設備位置と、水栓の形(自動式・足踏み式・肘レバー式など)
床・壁・天井の材質水を使う場所は、水がしみ込まない材質かどうか
区画厨房と客席・トイレ・更衣場所を分ける壁や扉
保管の場所原材料、洗剤など、清掃用具を置く場所
そのほか更衣場所、ふた付きのごみ箱、従業員が使うトイレと手洗い

客席のテーブルなどは、図面で省略してかまわないとされています。

営業許可の申請のときにも、施設の構造と設備を示す図面を出します。事前相談で指摘された点を反映した図面を、そのまま申請に使える形にしておくと、手戻りを減らせます。

飲食店営業許可の施設基準で、内装に関わるポイント

施設基準のうち内装で決まるのは、手洗い・シンク・床と壁と天井・区画が中心です。どれも完成後に変えると、配管や下地から工事し直すことがあります。

営業許可の業種と施設基準は、食品衛生法の改正により、2021年6月から新しい制度になっています。下の表は、福岡市保健所の「営業施設の施設基準」から、内装に関わる項目をまとめたものです。

基準の項目基準の主な内容内装で決めること
手洗い設備手指を洗浄・消毒する装置を備えた流水式の手洗いを、必要な数だけ置く。水栓は、洗った手が再び汚れにくい構造位置と数、水栓の形、給水と排水の経路
洗浄設備(シンク)使い道に合った大きさと数。食材の下処理と器具の洗浄をする場合は2つ以上シンクの数と大きさ、給湯
床・壁・天井清掃しやすい材料と構造。水で洗う場所の床は水がしみ込まない材質で排水がよく、壁は汚れやすい高さまで水がしみ込まない材料で仕上げる床材と床の排水、腰壁の高さ、天井材
区画作業に応じて間仕切りなどで区画する。住居などとも区画する厨房と客席・トイレ・住居の間の壁や扉
そのほか作業に必要な明るさの照明、結露を防ぐ換気、ねずみや虫の侵入を防ぐ設備、更衣場所、専用の手洗いがある従業員用のトイレ照明と換気扇の位置、扉のすき間、更衣場所の広さ

腰壁とは、壁の下のほうを、水や汚れに強い材料で仕上げた部分のことです。手洗いの水栓の形とシンクの数は、給排水の配管の位置に関わるため、着工前に決めておきます。

ポイント

求められる設備は、業態と調理の内容で変わります。メニューと調理の流れを図面と一緒に伝えると、事前相談で具体的な答えをもらいやすくなります。

工事が要らない・後回しにできる部分と、先に進めておける準備

営業許可の基準に関わらない部分は、開業後に足すこともできます。一方で、施設基準に関わる設備は、確認検査の前にそろえておく必要があります。

  • 後回しにできるもの:客席の装飾、照明の演出(作業に必要な明るさとは別)、家具のグレード、置き看板
  • 工事が少なくて済むことがあるもの:居抜きで、基準に合う手洗い・シンク・床や壁が残っている場合(今の基準に合うかは図面で相談します)
  • 基準が一部緩和されるもの:そのまま出せる食品を盛りつける、半製品を温めるといった簡易な調理だけの営業(区の衛生課食品係で確認します)

工事と並行して、オーナー様が先に進めておける準備もあります。

  1. 食品衛生責任者を決める:食品衛生責任者とは、お店ごとに置く、衛生管理の中心となる人のことです。オーナー様自身がなることもできます。調理師や栄養士などの資格がない場合は、養成講習会を受けます(福岡市では福岡市食品衛生協会が実施)。
  2. 衛生管理の計画をつくる:福岡市の手引きでは、確認検査までに衛生管理計画を作っておくよう案内しています。HACCPに沿った衛生管理とは、食中毒などの原因になる危険を工程ごとに考えて管理する方法のことです。小規模なお店は、業界団体の手引書を使って取り組めます。

先に決めるのは基準に関わる設備、後から足すのは見た目の演出、と分けて考えると、開業資金を残しやすくなります。

お店の図面や写真をLINEで送っていただければ、施設基準に関わる設備が図面に入っているかを一緒に確かめられます。

完成後の手直しになりやすい箇所と注意点

手直しになりやすいのは、配管や下地に関わる設備です。仕上げたあとに見つかると、床や壁を開けて工事し直すことがあります。

手直しになりやすい箇所主な工事費用の目安(税込)
厨房と客席・トイレの区画が足りない間仕切り壁の新設1mあたり3万円〜
厨房の床が、水がしみ込む素材になっている床の張替え(塩ビタイル・長尺シート)㎡あたり4,000円〜
手洗い設備が足りない・水栓の形が合わない手洗い器の追加、水栓の交換(給排水の工事を含む)個別にお見積り
作業する場所の照明が暗い照明器具の交換1台あたり8,000円〜(器具代は別途)

費用は、物件の状態と工事の範囲で変わります。

ご注意ください

施設基準に合わない場合、その場では許可されず、直してから再検査を受けることになります(福岡市の手引き)。手直しと再検査の分だけ開業日がずれることがあるため、事前相談で指摘された点は、工事用の図面に反映してから着工します。

営業許可を受ける前にお店の営業を始めることはできないため、検査と許可証の交付の日程は、開業日から逆算して先に押さえておきます。

保健所の検査のタイミングと、開業日から逆算した日程

保健所の確認検査は、工事が終わってから受けます。申請と検査日の調整は営業開始の少なくとも1週間前までに済ませ、許可証の交付までの日数も見込んで日程を組みます。

20坪前後の飲食店をスケルトンからつくる場合の目安は、次のとおりです。スケルトン物件とは、床・壁・天井の仕上げや設備がない、コンクリートむき出しの状態の物件のことです。

  1. 開業の4か月前ごろ:物件の候補選び。気になる点は、予定地の区の衛生課食品係に相談できる
  2. 開業の2か月半前ごろ:工事用の図面ができたら、保健所と消防署に事前相談する
  3. 開業の2か月前ごろ:指摘を図面に反映し、工事の契約と工程表の共有
  4. 開業の1か月半前ごろ:着工。工事の進み具合に合わせて営業許可を申請し、検査日を決める
  5. 開業の1〜2週間前:工事の完了、保健所の確認検査と手直し
  6. 許可証の交付後:営業開始

福岡市の手引きでは、許可証は基準に合うことを確認したあと、書類の作成のため交付まで数日かかるとされています。博多区の案内では、検査日から1週間程度が目安です。検査日は、手直しと許可証の交付にかかる日数を見込んで、開業日の直前に置かないようにします。

各段階の詳しい進め方は、開業までの流れにまとめています。

保健所のほかに確認したい手続き(消防・下水道)

飲食店の開業では、保健所の営業許可のほかに、消防署への届出なども必要です。どれも内装の図面と関わるため、保健所への事前相談と同じ時期に確かめます。

防火対象物使用開始届とは、お店などの建物の使用を始める前に、所轄の消防署に出す届出のことです。グリストラップとは、厨房の排水から油や食べ物のくずを分けて、下水に流れないようにする装置のことです。

手続き・確認窓口時期・内容(2026年9月時点)
防火対象物使用開始届所轄の消防署(予防課)新たにテナントを使う場合は、使用開始の7日前まで
消防用設備・火を使う設備所轄の消防署(予防課)客席の増設やレイアウトの変更で、設備が必要になることがある。厨房設備の規模によっては、設置工事に着手する7日前までの届出も
グリストラップ福岡市道路下水道局油を含む排水を流す飲食店などに、設置を求めている

福岡市消防局は、計画の段階から所轄の消防署に相談するよう呼びかけています。保健所と消防署への相談は、同じ図面で同じ時期に進めると、指摘を一度に反映できます。

届出・申請はオーナー様(または建築士・行政書士)が行うものです。福岡店舗内装工事.comでは、事前相談に使う図面の用意と、検査日から逆算した工程づくりをお手伝いします。

事前相談の図面づくりを相談するときに伝えること

図面づくりのご相談では、業態とメニュー、物件の情報、開業の希望日が分かると、施設基準に関わる設備を早めに図面へ入れられます。

  1. 業態とメニュー:下処理の有無、揚げ物・焼き物など調理の内容、厨房に入る人数
  2. 物件の情報:募集図面、写真、前のお店の業種(居抜きかどうか)
  3. 使う厨房機器:シンク・冷蔵庫・食器洗浄機などの予定
  4. 開業の希望日:検査と許可証の交付の日数から逆算します

飲食店の店づくりは飲食店の内装工事、スケルトンから厨房をつくる進め方はスケルトンからの内装工事にまとめています。費用の目安は飲食店の内装工事の費用と坪単価の相場、居抜き物件を検討中なら居抜き物件の契約前チェックリストもご覧ください。

飲食店の保健所への事前相談でよくあるご質問

物件を契約する前でも、保健所に相談できますか?
はい、相談できます。福岡市では、これから営業を始める人は、予定地がある区か自宅がある区の衛生課食品係で相談できると案内しています。設計が固まったら、着工前にあらためて図面で相談しておくと、工事の手戻りを防ぎやすくなります。
営業許可の申請は、いつまでに出せばいいですか?
福岡市の手引きでは、営業開始予定日の少なくとも1週間前までに出すよう案内されています(2026年9月時点)。申請のときに検査日を調整し、検査のあと許可証の交付にも日数がかかるため、余裕をもって申請しましょう。
保健所の検査には、だれが立ち会えばいいですか?
営業者か食品衛生責任者が立ち会います。検査までに衛生管理の計画を作っておくよう案内されているので、あわせて準備しておきましょう。設備の仕様を説明しやすいよう、施工する業者とも検査日を共有しておくと進めやすくなります。
検査で基準に合わないと言われたら、どうなりますか?
その場では許可されず、指摘された点を直してから再検査を受けます。手直しの工事と再検査の分だけ、開業が遅れることがあります。着工前の事前相談で、図面の段階から基準に合わせておくと防ぎやすくなります。
営業許可の申請も、内装業者にお願いできますか?
営業許可の申請は、オーナー様(または依頼を受けた行政書士)が行うものです。福岡店舗内装工事.comでは、事前相談に使える図面の用意と、検査の日程から逆算した工程づくりをお手伝いしています。申請書の書き方は、お店がある区の衛生課食品係で確かめてください。

まとめ

  • 飲食店の保健所への事前相談は、工事に着手する前に、設計済みの図面で行う(福岡市では各区の衛生課食品係)
  • 図面には、手洗い設備と水栓の形、シンクの数、床・壁・天井の材質、区画、保管場所などを書き込む
  • 営業許可の申請は、営業開始の少なくとも1週間前まで。検査と許可証の交付の日数も見込んで日程を組む
  • 装飾や家具は後から足せるが、施設基準に関わる設備は確認検査の前にそろえる

制度や基準は変わることがあるため、最新の内容は所管の窓口で確かめながら進めましょう。図面を見ながら一緒に整理したいときは、物件が決まる前でもご相談ください。